Total chemical synthesis of homogeneous N-glycoprotein

[要約]

このページでは、N型糖鎖全長をもつ糖タンパク質の化学合成にはじめて成功した結果について述べる。

[糖タンパク質の全合成]

糖タンパク質の全合成は、Native chemical ligation (NCL)法の開発と、卵黄から均一な複合型N型糖鎖を得る方法の開発により、非常に容易になった。これらの方法に基づき、2008年、梶原とDawsonのグループは、76アミノ酸と複合型N型糖鎖から構成されるCC-ケモカインである糖タンパク質(単球走化性タンパク質-3:MCP-3)の化学合成に成功した(図4)[23]。この合成では、3つの保護されていないペプチドセグメント38、39、40を用いた2段階の連続的なNCLにより、ネイティブな糖タンパク質MCP-3 43が得られた。課題であった、糖ペプチドチオエステル38の合成は、Fmoc SPPS法またはBoc SPPS法でそれぞれ達成された。Fmoc法では、ペプチドの側鎖が保護された糖ペプチドをSPPSで合成後、アミノ酸の異性化がおこらないよう低温でC末端のカルボン酸をチオエステル化することを確立した。また、Boc法では、保護基で側鎖が保護されたBocアミノ酸を最小限使うことで合成することに成功した。